日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定制度

 経済のグロ-バル化に伴い、各国間の技術者の自由な移動による技術移転を図り、経済の発展基盤づくりを進めるために、技術者資格を国際間で相互承認する仕組みが世界の3つの地域(北米では、NAFTA,ヨ-ロッパではFEANI,アジアではAPEC)で構築されています。このような情勢を受けて、日本においても技術者教育の質の改善と、国際的に通用する技術者資格の教育的基礎を確立することを目的として、1999年11月に任意団体の日本技術者教育認定機構(JABEE:Japan Accreditation Board for Engineering Education)が発足しました。

 JABEEの目標とするところは、「大学など高等教育機関で実施されている技術者教育プログラムが、社会の要求水準を満たしているかどうか、を外部機関が公平に評価し、要求水準を満たしている教育プログラムを認定する専門認定制度」を確立することです。

 技術者教育といっても、その分野は極めて広範囲なものです。現在では14の分野で各学会が担当して制度を立ち上げ、各分野で必要な技術・要件などの整理を行っています。我々のプログラムは、それらの分野の内「農業工学関連分野」を対象にしています。

 JABEEの認定を受けるためには、その教育プログラムが対象としている分野での要件を満たすことのほか、下記の基準を満たしていることが必要です。

基準1 学習・教育到達目標の設定と公開
1.1 自立した技術者像の設定と公開・周知
1.2 学習・教育到達目標の設定と公開・周知
基準2 教育手段
2.1 カリキュラム・ポリシーに基づく教育課程、科目の設定と開示
2.2 シラバスに基づく教育の実施と主体的な学習の促進
2.3 教育団、教育支援体制の整備と教育の実施
2.4 アドミッション・ポリシーとそれに基づく学生の受け入れ
2.5 教育環境及び学習支援環境の運用と開示
基準3 学習・教育到達目標の達成
3.1 学習・教育到達目標の達成
3.2 知識・能力観点から見た修了生の到達度点検
基準4 教育改善
4.1 内部質保証システムの構成・実施と開示
4.2 継続的改善

 これらの基準(基準1)の中で示されているJABEEの「学習・教育到達目標」とは、プログラムの修了生が確実に身につけておくべき知識・能力であり、知識・能力観点(a)~(i)として下記のように示されています。

(a) 地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養

(b) 技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、及び技術者の社会に対する貢献と責任に関する理解

(c) 数学、自然科学及び情報技術に関する知識とそれらを応用する能力

(d) 当該分野において必要とされる専門的知識とそれらを応用する能力

(e) 種々の科学、技術及び情報を活用して社会の要求を解決するためのデザイン能力

(f) 論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力

(g) 自主的、継続的に学習する能力

(h) 与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力

(i) チームで仕事をするための能力

 本カリキュラムでは、これらの時間を満足する内容となっています。なお、予習・復習・レポート作成等の自己学習を行うことが、授業の理解を高めるのに重要です。

 先にも述べましたが、当農業土木コースはJABEE基準の技術者教育プログラムとして認定されていますので、当コースの卒業生は、技術士第一次試験が免除される修習技術者の資格が与えられます。そして技術士補となるには、補助しようとする技術士の証明書を添えて(財)日本技術士会に登録する必要があります。さらに、技術士第二次試験の受験資格を得るには、技術士補の資格を得た後4年間以上の実務経験を積むか、優れた監督者の指導の下で実務経験を4年以上積むか、7年以上の業務経験があることが必要で、この第二次試験に合格し、登録手続きを行うことで技術士となることができます。その仕組みを下図に示します。

JABEE基準の技術者教育プログラム