女性ホルモンで東京湾の魚がメス化 尿に含まれ海へ


 東京湾の魚にみられる「メス化」現象の主な原因は、下水処理水に含まれる天然女性ホルモンの可能性が高いことが、東京都環境科学研究所の調査でわかった。メス化は人工化学物質と女性ホルモンの複合的作用が原因とみられてきたが、同研究所は下水処理場近くの海域調査や実験を通し、「人工化学物質より、女性の尿などに含まれる女性ホルモンの影響が大きい」としている。

 同研究所によると、下水処理場からは、女性ホルモンを含む処理水が排出されている。人間の女性や動物のメスの尿などに含まれる女性ホルモンは、魚のオスが一定量を摂取すると、体内でメス特有のたんぱく質ビテロジェニンを生成し、精巣内に卵細胞を形成することがある。

 同研究所の和波一夫研究員らは02〜03年、東京湾の京浜運河など、下水処理場に近い海域を中心に魚19種類861匹を捕獲し調査した。

 結果によると、ボラ、コノシロ、サッパ、ヒイラギのオス計23匹のうち5匹の精巣内に、本来メスが持つ卵細胞があった。卵細胞はなくてもビテロジェニンの血中濃度が、汚染の少ない九州などの海のボラ(オス)と比べ、数百〜数千倍に上るボラもいた。

 下水処理水には、メス化の一因とされる人工化学物質の環境ホルモン(内分泌撹乱(かくらん)化学物質)も含まれるが、天然女性ホルモンの方がメス化を促す作用が強いという。同研究所は既に実験で、下水処理水で育てたメダカがメス化する現象を確認している。

 今回調査した下水処理場に近い海域の女性ホルモン濃度は、沖合の海水に比べて最高約4倍にのぼるなど、高かった。今後、ボラが食べる海底の泥なども分析し、さらに裏付けを進める。

 一方、男性の尿などに含まれる男性ホルモンの魚への影響については、世界的に調査研究例がほとんどなく、未解明な部分が多いという。魚のメス化は今のところ、生態系には影響していないとされるが、水産庁生態系保全室は「環境ホルモンと女性ホルモンの作用バランスを探ることは、将来の対策を考える上で重要な研究」と言う。

 和波研究員は「メス化の原因としては環境ホルモンが注目されがちだが、生態系保全のためには天然女性ホルモンを視野に入れた対策が必要だ」と話している。

女性ホルモンが魚をメス化させる
女性ホルモンが魚をメス化させる
(04/03 17:41)


《朝日新聞社asahi.com2004年4月3日より引用》