細胞呼吸

このページの内容

細胞呼吸は,グルコースのような栄養分子を酸化して,二酸化炭素と水に分解する過程である。放出されるエネルギーは ATP の形で捕捉され,細胞のすべての活動に利用される。

この過程は,以下の 2 段階で起こる: 真核生物では,解糖 は細胞質で起こる。次の過程は ミトコンドリア で起こる。

ミトコンドリア

ミトコンドリアは膜に包まれた細胞小器官で,ほとんどの真核細胞の細胞質全体に分布している。その主な機能は栄養分子のポテンシャル・エネルギーを ATP に変換することである。 ミトコンドリアは,以下の構造物からなる:

外膜

外膜は多くの内在性タンパク質複合体を含み,ミトコンドリアに出入りする多種多様な分子やイオンが通過するチャンネルを形成している。

内膜

内膜は,以下の 5 種類の内在性タンパク質複合体を含む:

基質

内膜に囲まれた基質にはクエン酸回路で働く可溶性酵素や,脂肪酸の b 酸化にかかわる諸酵素が含まれている。

ここでピルビン酸は,

クエン酸回路

要約:

NADH と FADH2 の電子は次に述べる呼吸鎖の経路に引き渡される。

呼吸鎖

呼吸鎖は,次の 3 つの内在性タンパク質複合体からなる: ならびに自由に拡散できる 2 つの分子が含まれる。 これが複合体から複合体へ電子を送り出す。

呼吸鎖:

ミトコンドリアにおける化学浸透性

呼吸鎖電子伝達反応が進行する際に,H が膜を横切って一方から他方へ定方向的に輸送され,(2) ミトコンドリアの基質から膜間腔へ濃度傾斜に逆らって陽子 ( H+ ) を送るために,電子が NADH から酸素への濃度傾斜を通過する時に放出されるエネルギーが,呼吸鎖の 3 つの酵素複合体によって利用される。

その結果として生じる 陽子 ( H+ ) の偏在が ATP 合成のエネルギー源となる。この過程は 化学浸透 と呼ばれ,1966 年ミッチェル P. Mitchell によって提唱された。

ATP のモル数

ほとんどの ATP は,ミトコンドリア内膜を横切って形成された陽子の濃度傾斜によって生成される。ATP シンターゼを通って陽子が戻る時に,電子対当たり 3 モルの ATP ( ただし, FADH2 に結合したものでは 2 モルの ATP )が合成される。

グルコース 1 モルから 12 対の電子が遊離するので,

したがって,34 モルの ATP が生成される。

この他に 4 モルの ATP が生成されるので,合計 38 モルとなる。

その内容は:

しかし,ミトコンドリアには,必要な分子やイオンの能動輸送など,他にもたくさんの機能があり,陽子の濃度勾配のエネルギーはこれらにも利用される。

また,NADH は多くの細胞反応の還元剤としても用いられている。

したがって,実際の ATP 量は細胞の状態によって変動するる。おそらく,30 モルを超えることはないだろう。

ミトコンドリア DNA ( mtDNA )

ヒトの ミトコンドリア mitochondrion は, 5 - 10 個の環状 DNA 分子を含んでいる。各 DNA 分子は,以下をコード化する 37 個の遺伝子を含む,16,569 個の塩基対から成る:

rRNAtRNA 分子は 13 種類のポリペプチドを合成する機構に利用される。

この 13 種類のポリペプチドはミトコンドリアの内膜にあるタンパク質複合体のサブユニットで, NADH デヒドロゲナーゼシトクロム c 酸化酵素 ならびに ATP シンターゼ のサブユニットも含む。しかし,これらのタンパク質複合体のそれぞれには,核の遺伝子にコード化されたサブユニットも必要である。すなわち,それらは細胞質で合成された後,ミトコンドリアへ移送されるものである

mtDNA の突然変異は遺伝病の原因となる

ミトコンドリア遺伝子の突然変異によって多くの疾病が起こる。たとえば,

様々な器官が影響されるが,脳および筋肉の遺伝病が最も一般的なものである。これは,おそらくこれらの両器官のエネルギーの大きな需要を反映しているものと思われる。

これらの障害のいくつかは生殖細胞を介して受け継がれる。精子のミトコンドリアは受精卵の中に残らないので,すべての場合の突然変異遺伝子は母親から受け継いだことになる。他の遺伝病は 体細胞 に起こった突然変異が原因となる。

例: 運動不耐性

運動不耐性 ( 筋肉が容易に疲労してしまう ) に苦しむ多くのヒトは,シトクロム b 遺伝子の突然変異をもつ。奇妙にも,彼らの筋肉中のミトコンドリアだけ突然変異を示す。他の器官のミトコンドリア正常である。おそらく,胚発生の極めて早期にある細胞で,シトクロム b 遺伝子に突伝変異が起こり,この細胞が筋肉に発生する運命にあったものと考えられる。

なぜミトコンドリアは自らのゲノムを持っているのだろうか?

ミトコンドリアの遺伝システムの特徴の多くは,細菌のような前核生物にみられるものに近い。このことは,ミトコンドリアが進化的に前核生物の子孫であるとする説を支持する。

すなわち,ミトコンドリアは地球上における生命誕生の初期に,真核細胞の先祖との 内部共生的 endosymbiotic な関係を築いた前核生物の子孫と考えられている。しかし,ミトコンドリアの機能に必要な遺伝子の多くはその後核ゲノムに移ったと考えられている。

最近,Rickettsia prowazekii のゲノム の塩基配列決定がなされ,その多くの遺伝子がミトコンドリアにみられるものと極めて近い関係にあることが分かってきた。おそらく,リケッチアの仲間が真核生物のミトコンドリアになった内部共生者と最も近縁の生きた子孫であろう。


前ページへの移動はWebメニューの戻るを利用してください
April 1, 2010