セカンド・メッセンジャー
セカンド・メッセンジャーは細胞表面で受け取ったシグナルを中継する分子のことである。細胞表面の受容体には,
が到達するが,セカンド・メッセンジャーがそれを受けて細胞質または核内の分子に作用する。
セカンド・メッセンジャーはシグナルを中継するだけでなく,シグナルを増幅する役目も果たしている。細胞表面の受容体にホルモン等が結合すると,細胞内の生化学的活動に大きく影響を与えることになる。
セカンド・メッセンジャーには 3 つの種類がある:
- サイクリック・ヌクレオチド ( たとえば, cAMP や cGMP )
- イノシトール三リン酸 inositol trisphosphate ( IP3 ) やジアシルグリセロール diacylglycerol ( DAG )
- カルシウム・イオン ( Ca2+ )
サイクリック AMP ( cAMP )
あるホルモンはセカンド・メッセンジャーとして cAMP を介して作用している:
サイクリック AMP は酵素, アデニリル・シクラーゼ の作用によって ATP から合成される。
- ホルモンがその受容体に結合すると
- G タンパク質 が活性化され,これによって,
- アデニリル・シクラーゼが活性化される。
- この結果 cAMP が上昇し,細胞が対応するよう,以下のどちらか ( または両方 ) のように働く:
- 細胞質の分子活動を変化させる。これには,タンパク質キナーゼ A Protein Kinase A ( PKA ) - すなわち cAMP-依存性タンパク質キナーゼ ( タンパク質をリン酸化する酵素 ) が働く。
- 新たな遺伝子翻訳のスイッチが入る。
サイクリック GMP も ATP から合成されるが,別な酵素 グアニリル・シクラーゼ guanylyl cyclase が用いられる。
サイクリック GMP は,以下のもののセカンド・メッセンジャーとして働く:
- 心房性ナトリウム利尿ペプチド atrial natriuretic peptide ( ANP ) - 28 個のアミノ酸からなる心房から分泌されるホルモン
- 一酸化窒素 nitric oxide ( NO )
- 光に対する網膜の桿細胞の反応
cGMP の影響の一部はタンパク質キナーゼ G Protein Kinase G ( PKG ) - すなわち cGMP-依存性タンパク質キナーゼ ( タンパク質をリン酸化する酵素 ) が働く。
たとえば,以下のホルモン:
が G タンパク質結合受容体 G-protein-coupled receptor ( GPCR ) に結合すると,細胞内酵素 ホスホリパーゼ C ( PLC ) が活性化される。
これは, リン脂質 - とくに phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate ( PIP2 ) ( 細胞膜の内層に見出されている ) を加水分解する。 PIP2 の加水分解によって,2 つの産物が生じる:
IP3 と DAG の機能が示すように,カルシウム・イオンも細胞内の重要なセカンド・メッセンジャーである。
通常,細胞内のカルシウムレベルは低いが,そのレベルが劇的な上昇を示すのは:
- 細胞膜の 電位型チャネル が細胞外液からカルシウムを流入させる。または,
- 小胞体やミトコンドリアのような細胞小器官に蓄積されていたカルシウムが放出されるためである。
細胞質のカルシウム・イオンの上昇によって,仲介される生理現象の例:
- 筋収縮
- シナプス での神経伝達物質放出
- カルシウム依存性タンパク質キナーゼに ( PKC ) のよって仲介される種々の生化学的変化
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April 1, 2010