教員紹介

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西野 敦雄 にしの あつお

  • 英語表記 Atsuo Nishino
  • 職名 准教授
  • 所属 弘前大学 農学生命科学部 生物学科
  • 専門分野 動物生理学・分子進化学
  • email anishino [at] hirosaki-u.ac.jp
  • 電話 0172-39-3590
  • ホームページ http://nature.cc.hirosaki-u.ac.jp/lab/animalphysiol/

※メールアドレスは [at] を @ に変えてください。

メッセージ

大学は、知を求める社会的装置であり、それに属する研究室は新たな知を求める探検隊といえます。探検のプロセスが、永久に続くようにも思える単純な歩行の繰り返し、成功の見込みがあるのかないのか分からない激しい登攀、転落に対するリスク管理、といった要素で構成されているとすれば、研究もまた探検に他なりません。
    構成員は、全体の運命に責任を負っています。技術的に未熟な構成員は、先輩から目標を達成するためには自分はどのように振舞うべきかを学び、実行する。これを全ての構成員が、自発的に行って、成長していかなければ、チームをつくる意味もありません。
    研究は、自然に切り込んで知識を引きずり出す行為です。それゆえに、きつく、汚く、ときに危険です。さまざまな知識とスキルを身に付けなければ、成長も目的を達することも出来ません。真剣な勉強と訓練が出来なければ、探検隊にいる意味もないのです。組織立ったリスク管理を行うには、メンバーとの円滑なコミュニケーションも必要です。先輩の教えを守ることからはじめるのはいい、けれど、先輩にいわれたことだけをこなしていたり、自分の殻に閉じこもったり、自分のプライドを保つために無知を隠し、かつそれを放置していては、チームは危険にさらされるという自覚を要します。
    研究は、未知なるものに向けられていなくてはなりません。歩む動作は他と同じでも、到達点が他と同じでは興味深い探検でありません。しかも他に遅れをとるのは、悔いの残る結果しか生みません。子どもが抱く疑問に応えるような、純粋な到達点を目指すものであれば、夢を感じることができるでしょう。
    他方で、研究の道行きはほとんどが失敗によって構成されるものです。ノートを取っていればどうにかなるといった営みではないのです。致命的でない失敗はいくらでも許されます。しかし自らの怠慢のために同じ失敗をいたずらに繰り返すことは許されません。試行錯誤を何度も何度も繰り返すのは、本当に苦しいことです。しかしその末に、最善のルートを見つけることが出来たとき、不安は確信に変えられる。その試行錯誤に耐えることができなければ、その探検は探検に値しません。
    では、なぜそうまでして研究をするのか、、、到達した場所は常に、自分が思い描いていたよりはるかに素晴らしく、完遂した喜びが何者にも代えられないからで、そのプロセスで成長した自分が、以前の自分とはっきり異なることが自覚できるからです。到達した場所が、そのような場所でなかったのなら、それは目指していた場所でなかっただけに過ぎません。
    何年かを経て、そのうち先輩はあれこれ指図することをやめるでしょう。その時には、自分が本当に望む目標に向って歩いていく能力が徐々に備わってきていることを感じることができます。
   
    自分から進んで探検をし、苦しい試行錯誤に耐え、仲間と正確なコミュニケーションをし、後輩に背中を見られながら目標をめざす人間は、自分で考え、自分で行動し、自分で問題を解決して、自分で食っていける人間になるでしょう。それこそ世界のどこででも。あとは自分の登りたい山に向って歩きながら、新たな仲間と進むのがよいでしょう。
    仲間からしっかり信頼される、どんな厳しい世の中でもしっかり問題解決の糸口を見つけ、解決のために粘り強い努力を続けることができる、そういう存在でいれば、どこでも大丈夫です。
   
    当研究室は、ともに探検に挑むメンバーを募集しています。大学院進学を希望する場合は、研究分野・研究テーマの項などもよく読み、志望を決定する前に必ず西野に直接会って話をするようにしてください。

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当研究室からは巨きな山(岩木山)が見えます。


研究テーマ

動物生理学・分子進化学

 海産無脊椎動物の生理機能や機能形態の発生に関わる制御機構の解明および関連する分子進化研究。特に、尾索動物のプランクトン環境における運動機能の適応進化に関する分子基盤の解明を目指す。
    ホヤ、オタマボヤ、ウミタルなどを含む尾索動物は、近年、我々ヒトを含む系統である脊椎動物に最も近縁な系統を構成することがほぼ確定された動物群である(図1)。これらの動物群の生活史進化の解明は、脊椎動物の起源と進化を理解する上で本質的な意味合いを持つ。
    ホヤは幼生期に脊椎動物と多くの派生形質を共有したオタマジャクシ型の形態を示す。ホヤのオタマジャクシ幼生は、一時期の浮遊期間を経て着底し、変態して、固着性の成体となる。ウミタルも、オタマジャクシ形の幼生期を経た後、浮遊性の成体となる。それに対してオタマボヤは、一生の間、オタマジャクシ形態を保持したまま浮遊生活を送る(図2)。このような多様な生活史はどのように生まれたのだろうか。祖先型はどのようなものだっただろうか。尾索動物は脊椎動物の姉妹群を構成するがゆえに、そこで明らかにされる祖先の姿は脊椎動物の起源に重なる。
    尾索動物オタマジャクシは、単純な細胞構成を大きな特徴とする。100個程度の神経細胞で外界の感覚刺激を受容、処理し、高々数十個の筋肉細胞を駆動して遊泳運動を行う。そのような単純さにもかかわらず、敏英な感覚応答と、洗練された運動機能を備えている。ただし、興味深いことに、成体期は固着性であるホヤ、成体期が浮遊性であるウミタル、そして一生をオタマジャクシ形で過ごすオタマボヤ、それぞれのオタマジャクシ形態の示す運動能力は顕著に異なり、それぞれの生活史形態に適応している(生命誌研究館「生命誌ジャーナル」69号参照→http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/69/research_2.html)。
    これらオタマジャクシは単純な細胞構成を備え、ホヤとオタマボヤではゲノム情報も蓄積しており、遺伝子機能を解析する手法も整備されてきている。実際、遺伝的プログラムを人為操作することで、特定の細胞の発生運命や生理機能を変更する実験を行うことができる。
    以上を考え、尾索動物のオタマジャクシ形態が示す、運動機能の系統特異的な適応現象に注目し、その分子生理学的な基盤を解明することを目標とする。

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図1:後口動物の系統関係。

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図2:尾索動物に属するホヤ、ウミタル、オタマボヤの生活史。ホヤは有性生殖のみを行う種(i)と無性生殖も行う種(ii)がある。

 

1.カタユウレイボヤ/ユウレイボヤ幼生の遊泳運動制御の神経・筋肉生理学

 カタユウレイボヤとユウレイボヤは既にゲノム情報が公開され、さまざまな研究手法が確立している有用な研究材料である。これらの幼生は脊椎動物とボディプランを共有しながら、極めて少数の細胞で体が構成されている。例えば、筋肉細胞は片側に18個程度で、運動ニューロンも3~5対しかないと考えられている(図3)。それでいて、ホヤ幼生はサカナのように尾部に屈曲を左右交互に生じ、それを前から後ろに伝播することで推進し、また、屈曲の強度を調節する機構も備えている(図4)。この単純な神経、筋肉の細胞構成で、なぜこのように上手に泳ぐことができるのか? 当研究室はこの問題に、特に、神経細胞のコミュニケーションを媒介し、筋肉の活動の性質を決定する役割も果たすイオン輸送膜タンパク質=“イオンチャネル”に注目して研究を進めている。

2.尾索動物オタマジャクシの比較研究

 1.の研究を柱に、さらにさまざまなホヤの幼生を用いた運動能力に関する比較生理学研究、オタマボヤとウミタルに関する基礎生物学的(形態、生理、発生)研究に取り組む。1.の研究の進展にあわせて、遊泳運動の分子レベルでの比較研究に発展させていく。

 その他にも、当研究室が興味をもっている現象はたくさんある。長期的な視座に立って、徐々にノウハウを蓄積し、成否の可能性を見極めながら進めていく。また研究室のメンバーにも、新たな研究テーマの設定を奨励する。(ただし、西野への研究計画書の提出を求めます。)

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図3:カタユウレイボヤ幼生の体。上は筋肉細胞の境界をトレースしたもの。赤丸は核の位置を示す。下は一部の神経細胞にGFPを発現させたもの。中枢神経系の概要を示す。(注意:体外で粒々に光っているものはテスト細胞の自家蛍光でGFPの蛍光ではありません。)

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図4:カタユウレイボヤ幼生の遊泳運動。高速度カメラで撮影し、4.2ミリ秒ごとに体の中心線をトレースした結果を示している。最初と最後のコマだけ、幼生も表示している。


略歴

1997年

東京大学理学部生物学科(動物学) 卒業

1999年

京都大学大学院理学研究科生物科学専攻修士課程修了

2001年

京都大学大学院理学研究科生物科学専攻博士課程中退

東京大学大学院新領域創成科学研究科 助手

2002年

学位取得 博士(理学)京都大学

2004年

日本学術振興会特別研究員(PD) 自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター

2007年

大阪大学大学院理学研究科 助教

2012年

弘前大学農学生命科学部 准教授


業績

1) Nakajo K, Nishino A, Okamura Y, Kubo Y (2011) KCNQ1 subdomains involved in KCNE1 and KCNE3 modulation revealed by an invertebrate KCNQ1 ortholog. The Journal of General Physiology 138: 521-535.

2) Nakashima K, Nishino A, Hirose E (2011) Forming a tough shell via an intracellular matrix and cellular junctions in the tail epidermis of Oikopleura dioica (Chordata: Tunicata: Appendicularia). Naturwissenschaften 98: 661-669.

3) 西野 敦雄 (2011) アナログかデジタルか? 滑らかな動きを生む進化.季刊 生命誌ジャーナル 69: Research 2. http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/69/research_2.html

4) Nishino A, Baba SA, Okamura Y (2011) A mechanism for graded motor control encoded in the channel properties of the muscle ACh receptor. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 108: 2599-2604.

5) Ogasawara M, Sasaki M, Nakazawa N, Nishino A, Okamura Y (2011) Gene expression profile of Ci-VSP in juveniles and adult blood cells of ascidian. Gene Expression Patterns 11: 233-238.

6) Nakashima K, Nishino A, Horikawa Y, Hirose E, Sugiyama J, Satoh N (2011) The crystalline phase of cellulose changes under developmental control in a marine chordate. Cellular and Molecular Life Sciences 68: 1623-1631.

7) Ouchi K, Nishino A, Nishida H (2011) Simple procedure for sperm cryopreservation in the larvacean tunicate Oikopleura dioica. Zoological Science 28: 8-11.

8) Nishino A, Okamura Y, Piscopo S, Brown ER (2010) A glycine receptor is involved in the organization of swimming movements in an invertebrate chordate. BMC Neuroscience 11: 6.

9) Hill AS, Nishino A, Nakajo K, Zhang G, Fineman JR, Selzer ME, Okamura Y, Cooper EC (2008) Ion channel clustering at the axon initial segment and node of Ranvier evolved sequentially in early chordates. PLoS Genetics 4: e1000317.

10) 西野 敦雄 (2007) 海産無脊椎動物の発生と進化.「動物の形態進化のメカニズム」(佐藤矩行、倉谷滋 編)「シリーズ21世紀の動物科学」 第3巻所収、日本動物学会、培風館、 pp. 75-107.

11) 西野 敦雄、和田 洋、倉谷 滋 (2007) 無脊椎動物から脊椎動物を導く.「動物の形態進化のメカニズム」(佐藤矩行、倉谷滋 編)「シリーズ21世紀の動物科学」 第3巻所収、日本動物学会、培風館、 pp. 108-116.

12) Hibino T, Nishino A, Amemiya S (2006) Phylogenetic correspondence of the body axes in bilaterians is revealed by the right-sided expression of Pitx genes in echinoderm larvae. Development, Growth and Differentiation 48: 587-595.

13) Hibino T, Ishii Y, Levin M, Nishino A (2006) Ion flow regulates left-right asymmetry in sea urchin development. Development Genes and Evolution 216: 265-276.

14) Brown ER, Nishino A, Bone Q, Meinertzhagen IA, Okamura Y (2005) GABAergic synaptic transmission modulates swimming in the
ascidian larva. European Journal of Neuroscience 22: 2541-2548.

15) Okamura Y, Nishino A, Murata Y, Nakajo K, Iwasaki H, Ohtsuka Y, Tanaka-Kunishima M, Takahashi N, Hara Y, Yoshida T, Nishida M, Okado H, Watari H, Meinertzhagen IA, Satoh N, Takahashi K, Satou Y, Okada Y, Mori Y (2005) Comprehensive analysis of the ascidian genome reveals novel insights into the molecular evolution of ion channel genes. Physiological Genomics 22: 269-282.


キーワード :
2014年4月12日 更新

西野 敦雄 Atsuo Nishino

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