教員紹介

写真:福澤 雅志 教授

福澤 雅志 ふくざわ まさし

  • 英語表記 Masashi FUKUZAWA
  • 職名 教授
  • 所属 弘前大学 農学生命科学部 生物学科
  • 専門分野 発生生物学・細胞生物学・分子遺伝学
  • email fukuzawa [at] hirosaki-u.ac.jp
  • 電話 0172-36-2111(代表)

※メールアドレスは [at] を @ に変えてください。

メッセージ

◆現代において、生物学を志すということは、なにを意味するのだろうか?

生物に‘興味’があり、得体の知れないそのなにかに引きつけられて、研究したいと思っているはずである。そういう人たちは、やはり、それをするために選ばれた、そういう人たちなのである。

彼らは、多くのサブグループにわかれ、それぞれの興味をいろいろな形で追求している。
そこには、人類の生活向上に貢献するだとか、宇宙に移住したときに役にたつだとか、大義名分を掲げてはいるが、基本的には、知らないことを知る、つまり‘知の欲求’がその推進力になっている。理学という学問はそのスピリットを追求していくものだと思っている。そのなかで、たとえば世界に一万ある研究室から 2-3の人類に‘直接’役立つ発見があれば成功しているといえる。

 DNAの発見から分子生物学の進歩、同時に高速シークエンサーなどのハード面の飛躍的な進歩により、この30年ほどで生物学分野はとてつもない発展を遂げた。それに伴い、研究の細分化がおこり、各テーマがそのときの技術の限界まで解析されてきている。同時に、多くのゲノムプロ ジェクトが完了し、実用に供されるようになった。インターネットの発達で、だれでも、ワンクリックで膨大な量の情報にアクセスでき、かつては特定の研究室しかできなかったマス分析のような解析が、会社で安くやってくれるようになった。

 このような状況は、もちろん世界中の科学者が望んでいたものである。しかし、そのスピード故、それにあわせて研究室の対応が間に合わず、その変化についていけない研究室はとりのこされることになっている。私が研究者生活を送ってきたこの30年間はまさにその時代にあたっていた。

 世界の科学者たちによってつくりあげられつつある、バイオの世紀に生物学を志すことになった君たちは非常にラッキー である。しかし、それと同時に、膨大な情報を処理し、生物学的に意味のあるものに変換できる能力が、君たちに強く問われている。また、昔はDNAシーケンスだけで論文が書けたものが、いまでは最新の装置を用い、全ゲノムを解読し、あれもこれも考えうるすべての解析をやらなければ世界のレフェリーからノーと言われる時代である。世の中の常であるように、ラッキーがあれば、同時にアンラッキーでもあるのだ。

 では、どうすればいいのか? 答えは簡単である。それは、あるヨガ伝道師の言葉の中にあるのだ。
「なにか行動する前に、わたしとお茶を飲み、その行動が本当に意味のあるものなのか、もう一度考えなさい」

君たちも、わたしとお茶を飲み、知の追求について考えよう。

◆「粘菌よ、おまえはいったい誰なのだ?」M. Fukuzawa, 2004.

 粘菌は、土壌にひろく生息するアメーバである。
 南方熊楠先生の研究で有名なので、知っている人もいるかと思う。図2

 粘菌の話をすると、ああ、国民年金ね、などと、親父ギャグを返したり、進化の袋小路にはいったしょうもない生物、などという人たちもいるが、そういうひとは無視すれば良い。

 袋小路にはいっているからこそ、進化を考える上でおもしろいのである。しかも、細胞性粘菌では、遺伝学的な実験手法が確立されており、ゲノムプロジェクトも完了、NIH(National Institute of Health, USA)にモデル生物として正式に認可されている。つまり、研究上、ヒト、ショウジョウバエ、線虫、酵母などの他のモデル生物と同一レベルの重要性を持っているのだ。

 粘菌は24時間の発生サイクルにおいて、単細胞から多細胞体へ形態形成を行う。アメーバは、動物細胞のように動き回るし、多細胞体である移動体は、まるでナメクジのような形をしており、光の方に向かって移動することができ、原始的な動物のような印象を受ける。しかし、発生後期になると、移動体の前方の細胞群から、セルロースの壁に囲まれ、液胞化した植物細胞のような柄が形成され、それが球形の胞子塊を支えて、菌類のようなかたちになる。

この動物、植物両方の形質を持つことは、ゲノムを構成する遺伝子にも反映されている。すなわち、動物固有の遺伝子(転写因子Stat、ガラクトース結合型レクチンなど)、植物固有の遺伝子(転写因子1R-Myb、セルロース合成酵素など)が両方存在しているのである。 粘菌固有の遺伝子(核因子cudAなど)もあり、粘菌特有のかたちづくりにかかわっている。

粘菌はなぜ、動植物両方に共通する遺伝子を持っているのだろうか?上記の転写因子Stat、転写因子1R-Mybは、形態形成に必須の核ファクターである。粘菌細胞は進化上、両方をキープしておく必要があったと思われ、動物、植物がわかれる遥か以前の原始的な遺伝子群を、現代までひきついでいるタイムカプセルといえるのだ。


研究テーマ

◆発生生物学・細胞生物学・分子遺伝学

モデル生物である細胞性粘菌を研究材料として、細胞分化や形態形成がどのように制御されていくのかという分子機構を研究しています。

 ヒトのような高等動物では、ある現象に関わる遺伝子が、遺伝子群として多数存在し、それらが複雑にクロストークして発生を制御していますから、当然ながら全体の理解は難しく、研究者は生命現象のごく一部を見ているのが現実でしょう。高等動物よりもはるかに単純な多細胞体である細胞性粘菌であっても、やはり生命現象は奥深く、すべてが解明されるのは容易ではありません。しかし、細胞性粘菌が単純な多細胞モデル生物であることは大きな優位性があり、学生は歯車ではなく、自分の把握できる範囲で、かなり深い所まで(一研究者として)生命現象を探求していくことができます。

 

生物学科では第一に、その生物に対する愛情が必要です。研究分野によっては、たとえば有用物質が取れれば生物はどんなものでもよいという応用分野もありますが、生物学科は基礎分野を重要視し、生命とは何なのか、といった知の追究を目指すところです。大学に来て研究室に配属され、いきなり難しいことでチンプンカンプン、研究は先輩の手伝いで歯車みたい、というよりも、細胞性粘菌という生物と、それを解析するさまざまな方法とが自分の中で直結し、生命現象を理解していく感覚を私の研究室で体験できるでしょう。

 

・  発生生物学

粘菌が、単細胞から多細胞へ変化し、形を作っていく過程を研究します。

・  細胞生物学

粘菌アメーバについて、細胞骨格の変化や細胞運動などを研究します。

・  分子遺伝学

遺伝子を破壊したり、発現させたりすることで、遺伝子レベルで生命現象を研究します(モデル生物以外ではできないことです)。

 

◆「すすむも粘菌、もどるも粘菌」M. Fukuzawa, 2013.

 研究テーマとしては、以下のような、細胞性粘菌の発生、分化に関わる遺伝子の機能と、その発現制御をになう因子を研究しています。図3

1.              粘菌オーガナイザー細胞群の分化メカニズム

2.              植物固有の1R-Myb転写因子の解析

3.              粘菌固有の核ファクター、cudAファミリーの機能

4.              粘菌サイトカイニン代謝系

5.     前に進んだり、もどったりする細胞運動に欠陥のあるkbt(kobito)変異体の解析


略歴

1985年 北海道大学理学部生物学科植物学専攻卒業

1987年 北海道大学大学院理学研究科修士課程植物学専攻修了

1990年 北海道大学大学院理学研究科博士課程植物学専攻単位取得退学

                 北海道大学 助手 理学部

1994年 英国 Imperial Cancer Research Fund, Clare Hall 研究所に留学

1996年 英国 MRC Laboratory for Molecular Cell Biology, University College London

                 ポスドク研究員

1998年 英国 Wellcome Trust Biocentre, University of Dundeeシニア研究員

2004年 弘前大学 助教授 農学生命科学部

2010年 弘前大学 教授   農学生命科学部

図4


業績

著書

1)福澤雅志 2012(平成24年)(編著)

阿部知顕・前田靖男編:細胞性粘菌:研究の新展開〜モデル生物・創薬資源・バイオ

アイピーシー、第6章 317-340

 

原著論文(査読あり)

1)          Senoo H., Wang H. Y., Araki T., Williams J. G., Fukuzawa M. 2012(平成24年)
An orthologue of the Myelin-gene Regulatory Transcription Factor regulates Dictyostelium prestalk differentiation.
Int J Dev Biol, 56, 325-334.

2)          Ochiai H, Takeda K, Fukuzawa M, Kato A, Takiya S, Ohmachi T. 2011(平成23年)
Protein kinase B gene homologue pkbR1 performs one of its roles at first finger stage of Dictyostelium.
Eukaryot Cell 10: 512-520.

3)       Yamada Y, Minamisawa H, Fukuzawa M, Kawata T, Oohata AA. 2010(平成22年)
Prespore cell inducing factor, psi factor, controls both prestalk and prespore gene expression in Dictyostelium development.
Dev Growth Differ 52: 377-383.

4)       Oohata AA, Fukuzawa M, Hotta R, Nakagawa M, Niwa M, Takaya Y. 2009(平成21年)
Differentiation inducing factors in Dictyostelium discoideum: a novel low molecular factor functions at an early stage(s) of differentiation.
Dev Growth Differ 51: 743-752.

5)          Yamada Y, Wang HY, Fukuzawa M, Barton GJ, Williams JG. 2008(平成20年)
A new family of transcription factors.
Development 135: 3093-3101.


研究室・ゼミ

◆研究室

スペースは小さいですが、粘菌実験で必要なものはそろっています。

図5

無線LANの完備した学生部屋が実験室とは別にあり、3年生の所属時から自分の机がもてます。大学院生になると、専用のiMacが使えます。

図6

 

◆年間行事

 4月 研究紹介、新歓コンパ(3年生向け)

 5月 弘前城本出陣、月間発表

 7月 中間発表会

 9月 サマーキャンプ

10月 学会出陣

12月 年間発表会、クリスマスパーティー

 2月 卒論、修論発表会

 3月 ラボスキー、追いコン

 通年 中庭BBQ、ラボコンパ、ラボランチ(金曜)、西弘出陣

図10

図9

図8

図7

◆論文ゼミ

毎週、研究室全体で論文ゼミがあります。学生は各自の研究に関連した英語論文をまとめてパワーポイントで発表します。だいたい1人1時間ぐらいですが、討論によってはもっとかかります。はっきりいって、レベルは高いです(学生たちが勝手にレベルをあげています)。ラボの各種発表会は、論文ゼミの一環として行われ、討論でハマるので一日がかりです。


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2017年1月6日 更新

福澤 雅志 Masashi FUKUZAWA

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